眠りの果てに見たものは

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 苦しい。  高熱に体の骨が軋む。腹の中まで熱くなり、俺は全身の痛みに失神した。  意識が浮上してはまた気絶。そんなことの繰り返しだ。  火照った手にひんやりと冷たい感触を覚えた。重たいまぶたを持ち上げると、一人の少女がベッドのそばに座っていた。大きな目がまっすぐ俺を見つめている。 「君は誰だ?」 「サクラ。須藤(すどう)サクラ」  サクラ。初めて俺の問いに答えてくれた人物として頭の中にインプットされた。聞きたいことはたくさんあるのに、苦しくて言葉にならない。 「どうしてこんなに苦しいんだ? ここは一体どこなんだ?」  サクラは「それは」と言って言葉を区切った。 「苦しいのはワクチンの副反応よ。体が適応しようとしているの。症状が落ち着けば忘れていることも少しずつ思い出せると思う」  彼女の答えが正しいのかはわからない。しかし、熱に浮かされた俺の頭はその言葉を鵜呑(うの)みにしてしまった。 「大丈夫。あなたはじきに回復する」  彼女の冷たい手が額に触れる。いや、俺の体温が高いから冷たく感じるのか。自分が放置されているわけではないとわかり安心した。 「……うん」  サクラの声が心地よくて、俺はまぶたを閉じて意識を手放した。
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