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死出の朝に…③
「昨日、中原君が自殺を考えてるとか、込み入った事情はあなた自身からは聞いてないよ、何も。何しろ同窓会の席では、とりとめのない会話で終わったし。…ここで言うわ。私、霊感っていうか、普通の人が持っていない能力みたいなものがあるの。それは結構いろんなって言うか、できることが…。昨日で言えば、あなたの抱えてた悩みと苦しみは透視できた。もっとも、今言ったことを全部認識できたのは、今朝になってからよ」
「❕❕❕」
ノボルは必死になって彼女の告白をかみ砕いた。
だが、まだ点と点が結びつかないどころか、さらに繋ぐべき点が多くなっていくような気さえした。
「結局、私の能力は幾種もあるけど、不完全なの。完全には使いこなせていないのよ。でもこの年になって、ケースにもよるけど、念じる度合いによっては時間を置けばかなり正確に透視内容を把握できるようになったわ。つまり、日常的なことで言えば、咄嗟の判断では導き出せない考えも、後でじっくり頭を研ぎ澄ますと、いいアイデアが浮かぶってことってあるでしょ?」
「ああ、そんなイメージか…」
「中原君とのことは、それが叶ったから、昨日から今朝にかけての”あなた“が”見えた”んだと思う。…それで、肝心なことは、3人の女性とのことも、ホテルでのことも私が誘引したと…」
「❗️❗️❗️」
もう、ノボルの驚嘆は言語を排するレベルに達していたが、彼の驚きが一段落する前に、ユキノからはトドメの一撃が見舞われる。
***
「それって、私が生霊になって具現した非現実の空間移動なの。要は、私自身の願いで異空間を現出したと。昨日、潜在意識であなたの諸事情と胸の内を汲み取った結果、私の他にも、中原君が深い念を抱き続けてきた古澤さん達を霊的に呼び寄せた…。あなたを慮る気持ちの成せる業として。こうなるの。実際のその”シーン”は現実を隠しちゃうんで、私との会話は記憶に残らなかった…」
「…」
「それと…、ホテルでの私とのことも。私も恥ずかしい本性を曝け出して、弱いのはあなただけじゃないと知ってもらいたかったから…」
「じゃあ、昨夜のキミの姿は…」
「本当の私よ。凄く恥ずかしいけど、あの性癖は子供の頃からずっと根付いて離れていなかったもの…。厳密には被虐嗜好ってとこが源かもしれない。これは事実‥」
ここで中原ノブオは完全にのされた…。
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