34人が本棚に入れています
本棚に追加
「女の子が居たのは5両目です」
「乗客に話を訊かせて貰わなくてはいけないんです。協力して貰えますか?」
「はい」
僕は運転席から降りて5両目に警察官と行った。乗客たちはわさわさと騒いでいる学生や、スマートフォンを見ている大人がギュウギュウ詰めに乗っていた。警察官がドアの近くにいた学生に訊く。茶髪の男の子だ。事故にあった女の子と年齢はそんなに変わらないだろう。
「女の子のマフラーが挟まれたところを見たかい?」
「ええ」
「その時の状況を詳しく教えて貰えるかな?」
「あの子が引っ張ったんです」
男の子は紺色のブレザーを着た学生を指さす。ニキビがたくさんある地味な男の子だ。
「えっ?」
「女の子が電車を降りようとしたときです。あの、僕、見ました。あの子が引っ張って、だからマフラーがドアに挟まれたんです」
ニキビの男の子は青ざめる。
「君、ちょっといいかな?事情を訊かせてもらえる?」
警察官が険しい顔をしてニキビの男の子に言う。
「あの、僕、何も知りません」
「マフラーを引っ張ったんじゃないの?」
「僕、何もしてません」
乗客がざわつく。
「引っ張ってたよなあ」
茶髪の男の子は脅すように言った。
「呼び止めただけです」
警察官がますます険しい顔になる。
「ちょっと、2人とも警察署に来てもらえるかな?」
僕はどうしたら良いのか困った。もしドアに挟まるように仕組んで引っ張ったんだとしたら殺人に近い。このニキビの男の子と死んだ女の子は何か接点があるのだろうか。その時、運転手さんが来て。目を瞠った。
最初のコメントを投稿しよう!