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代わりの運転手さんが来て運転を代った。1時間以上も遅れて電車は走り始めた。警察署に行くと、詳しい事故の時の状況を訊かれた。僕は何度も同じことを喋った。
「何で直ぐに気が付かなかったんですか?」
「長いマフラーだったんで、電車から女の子は離れていたんです。それにマフラーの色もグレーで電車の色と同じだったのが悪かったんでしょう」
「まあ、いいです。ただ、事件の可能性が高いんだよなあ」
「どういうことですか?」
「今は言えないよ」
次の日、電車の事故のことが新聞に載った。詳しい内容は書かれていなかったが、僕は警察の言葉が気になっている。事件性が高いって言ってた。
仕事に行くと、今日も昨日の運転手さんと一緒になった。自然と事故の話になる。
「今日も仕事が終わったら警察署に来てくれだってさ」
運転手さんが渋い顔をする。
「昨日、長い時間、事情聴取されたじゃないですか」
「まだ、聞きたいことがあるんだってさ」
「僕も行きましょうか」
「そう、警察官も出来れば岡野くんに来てほしいって言ってたよ」
僕は「はい」と言って、いつも以上に慎重に仕事をした。
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