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仕事が終わって警察署に行くと、昨日のニキビの男の子とその父親らしき人が長椅子に腰かけていた。くたびれた服装をしている。この12月の真冬に薄いトレーナー一枚だ。僕はペコリとお辞儀をした。父親らしき人はツンと横を向く。愛想のない奴だ。そこに40代くらいの男性が前から歩いて来た。男性は父親らしき人を見て「あっ」と声をあげた。
「長野さんじゃないか」
「ああ、課長、なんでここに」
「娘が事故にあったんだよ」
「もしかして亡くなったって子か?」
んん、2人は知り合い?それも同じ会社か。僕は頭を捻った。警察官が取調室から出て来てニキビの男の子の父親に言った。
「やっぱり長野さん、知り合いだったかね。調べたら、同じ会社だったというじゃないか」
「ええ、リストラされたんです」
長野さんと呼ばれた父親は吐き捨てるように言った。
「詳しく訊きたいことがあるから、まあ部屋に入りなさい」
その後、僕と運転手さんは簡単に事故の時の様子を訊かれて帰路を共にした。
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