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(あなたは──)  白久は、はっと立ち上がった。  龍は、ゆっくりとまばたきをした。 (白久) (まさか……) (そうよ。わたしは、あなたの母親だったものよ) 「なぜ?」  白久は、混乱してささやいた。 「なぜ、こんなことに」 (おろかだったからよ)  龍は、鼻先にしわを寄せたように見えた。 (あなたと、お父さんを置いて、家を出たわ。帰らないつもりじゃなかった。ただ、少し考えてみたかっただけ。何のために自分はいるのか。なぜ、一門に縛られていなければならないのか。呪力のある子供を生むためだけに生きているのではないはずなのに)  白久は、息をのんで龍の思念を受け止めた。 (村を離れてどこまでも行って、気がついたら龍が翔んでいた。あなたと同じようにばかなことを考えた。あの龍に入りこんだとしたら──。龍は、わたしを拒まなかった。受け入れ、そして呑み込んだ。龍の霊は大きすぎたわ。わたしは、二度と身体に戻れなくなった) (母さん……) (当然のむくいよ。あの時、わたしがあなたやお父さんを捨てて逃げたのは確かなのだから。龍になれたら、どんなにいいだろうと)  
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