19

3/4
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
 亜鳥は、ゆるぎない決心をしているようだった。  以前の亜鳥は、静かだが内に凛とした強さを秘めていた。今は、その強さがはっきりと表に現われている。長い眠りとその目覚めは、彼女のどこかを変えていた。  白久は、黙って亜鳥の言葉を待った。 「一門には、新しい統率者が必要よ」  亜鳥は言った。 「わたしなら、誰も異存はないでしょう」  白久は、亜鳥を見つめた。  確かにそうだ。亜鳥は、一門が待ち望んでいた紫色の眼の持ち主。過去の〈龍〉と同じく、力ある呪力者なのだ。 「わたしも、母さんも──」  白久は、つぶやくように言った。 「逃げることばかり考えていた。一門を変えようなんて思わなかった」 「わたしだってそう」  亜鳥は目を伏せ、首を振った。 「でも、それが一番いけなかった。必要なのは前を見ること。もっと以前に考えていれば、こんなことにはならなかったのに」  白久は、黙って亜鳥の手を握りしめた。亜鳥は、まっすぐに顔を上げ、 「だから、やってみるわ、白久。〈龍〉を復活させるのよ」 「わたしも、叔母さんの手伝いがしたい」  白久は、心から言った。 「でも──」 「わかっているわ」  亜鳥は、優しく問いかけた。 「あなたには、もっとやりたいことがあるのでしょう?」 「ええ」  
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!