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亜鳥は、ゆるぎない決心をしているようだった。
以前の亜鳥は、静かだが内に凛とした強さを秘めていた。今は、その強さがはっきりと表に現われている。長い眠りとその目覚めは、彼女のどこかを変えていた。
白久は、黙って亜鳥の言葉を待った。
「一門には、新しい統率者が必要よ」
亜鳥は言った。
「わたしなら、誰も異存はないでしょう」
白久は、亜鳥を見つめた。
確かにそうだ。亜鳥は、一門が待ち望んでいた紫色の眼の持ち主。過去の〈龍〉と同じく、力ある呪力者なのだ。
「わたしも、母さんも──」
白久は、つぶやくように言った。
「逃げることばかり考えていた。一門を変えようなんて思わなかった」
「わたしだってそう」
亜鳥は目を伏せ、首を振った。
「でも、それが一番いけなかった。必要なのは前を見ること。もっと以前に考えていれば、こんなことにはならなかったのに」
白久は、黙って亜鳥の手を握りしめた。亜鳥は、まっすぐに顔を上げ、
「だから、やってみるわ、白久。〈龍〉を復活させるのよ」
「わたしも、叔母さんの手伝いがしたい」
白久は、心から言った。
「でも──」
「わかっているわ」
亜鳥は、優しく問いかけた。
「あなたには、もっとやりたいことがあるのでしょう?」
「ええ」
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