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亜鳥は、眠り続けた。
その間に、村では大がかりな葬儀が行なわれた。
〈老〉をはじめ、村の三分の一の人間が命を落としていたのだ。
壊れた琵琶と久伊の死体は、白久と三狼の手で、他の者たちとは離れた場所にひっそりと埋められた。
白久は、家の扉を閉ざしたまま、三狼以外の誰とも会わず、亜鳥の目覚めを待った。
亜鳥が、このまま目覚めなかったら。
そんな恐怖が、幾度か白久の胸をかすめた。だが、眠る亜鳥の表情は穏やかで、呼吸もしっかりしたものだった。
七日目の朝に、亜鳥はようやく目を開いた。
長い眠りは、亜鳥のほとんどの傷を癒していたが、弾けた弦に引き裂かれた右頬の傷は、むごたらしく残ったままだった。
亜鳥と顔を見合わせたまま、白久はしばらくの間何も言えなかった。
「いいのよ、白久」
亜鳥は、微笑んだ。
「村は、どんな具合?」
「喪に服しているわ。どの家も一人か二人の家族を失っているの。みんな、どうしていいのかわからないのだと思う。〈老〉がいなくなったから」
「そうね」
亜鳥は、うなずいた。
「でも、一門は変わらなくてはいけないわ。今がその時よ。呪力者だけが、〈龍〉ではないということをはっきりさせなければ。あなたの母さんや父さんのようなことが、二度と起こらないように」
「できるかしら」
「時間はかかるかもしれないわ。少しずつ一門の考えを変えていくしかないでしょうね。〈龍〉の誇りは、呪力ばかりではないということを」
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