第十話 煙、雨に溶けて

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 四時間目の授業。昼休み前ということで若干の空腹を覚え、あまり授業に身が入らない。  窓には梅雨の雨の水滴がついて、だらしなく垂れている。  今日、石田は休みだった。朝のHRの出席確認の時に担任が「石田は今日休みということだ。」と言ったことから、少なからず遅刻ではないということになる。かといって、もし体調不良の場合は大体担任からその旨が言われるはずだから、風邪という訳ではないのかもしれない。最近、放課後に頼みごとをしたり寄り道をこちらが誘った際に、用事があると言って断った石田が思い出された。もしかしたら、今日の欠席と石田が以前に二度言った用事というものが関係あるのだろうか。少し心配になる。  そんなことを考えて窓の外を見る。涼野美雪と非常階段で出会ってから、一番にそこを見る癖がついていた。あれから何度か気になって探したのだが、彼女があそこに居る気配はなさそうだった。そもそもそんなに見通しの良い場所でもないので、僕が見落としてるだけかもしれないが。  以前あそこに行った際に涼野美雪が自分の他に人が来ることもないと確か言っていた。もし、彼女が一人になりたくてわざわざあの場所に居るとするなら、僕が邪魔したのは何だか悪かったかなと思う。  そのまま授業を受けて終了のチャイムが鳴った。皆お腹が空いていたのかすぐに弁当を取り出したり、購買や学食に向かっていった。僕は普段購買や学食を石田と共に使っているのだが、今日は肝心のその石田が居ない。  さて、どうしたものかと考え何の気なしに窓の外に目をやると、非常階段の方で動く人影があった。もしかして、いやきっと彼女だろう。それを見て、そういえば、僕が彼女にたまに来てもいいかと聞いたな。でも、もしかしたら邪魔になるだろうかと思ったが、彼女のあの涼しい瞳、それは何故か理由を知りたい。その感情が頭をよぎると、僕は席を立っていた。
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