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第十一話 灰色の沈黙
放課後になって、僕は図書室のプリンターで今日の授業でとったノートのコピーをしていた。今日学校を休んだ石田から先ほど僕の携帯に連絡が入り、明日そのコピーを渡してほしいと頼まれたからだ。お礼に何かおごってくれるらしい。
数学のノートのコピーを取りながら、今日の昼休みに非常階段で涼野美雪と会っていた場面が思い出される。
高校生なのに、慣れた手つきで煙草を一本取り出して火をつける。
口からはゆらゆらと煙を吐き出す。
そんな彼女の姿が妙に印象に残った。
それと、愛というものが素直に受け入れられない人間、僕のことを確かにそう言った。その言葉の頭に、あなたも、と付けていたから、きっとそれは僕だけでなく彼女自身のことも指していたはずだ。
彼女はいったいどのような過去があってあんなことを言ったのだろう。
プリンターが鳴らす規則正しい機械音の中で、そんな疑問が頭に上った。
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