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第二話 噂
世界史の授業が終わり、教室に賑やかさが戻った。トイレへ行く者、次の授業の準備を始める者、談笑を始める者様々だ。僕も世界史の教科書を片付け、次の授業の準備をしていると、明るい声で話しかけられた。
「よおよお圭太、さっきはどうしたんだよう。」
声のする方へ顔を向けると、そこには石田彰が立っていた。石田は中学時代から付き合いのある僕の数少ない友人の一人で、一緒に今の高校に進み、去年はクラスが離れたが今年は同じクラスになった。
「さっきって?」
「授業中、畠山の野郎に注意されただろ。」
畠山というのはさっきよそ見していた僕を注意した世界史教師のことである。
「ああ、ちょっと窓の外を見てたら運悪く畠山に見つかっただけだよ。」
「本当に?」
おどけた顔は崩さないが少し疑いを込めた眼差しで僕に詰め寄る。いつもはノリが軽くお調子者の気があるが、こういう時の勘は少し鋭い。
「本当だよ。」
何故か僕は非常階段の人影のことは話さなかった。外が暗かったため本当に人だったか分からないし、そもそも見間違いかもしれない。
「ふーん、まあいいや。それよりさ、放課後何か食いに行かない?俺腹減っちゃってさ。」
「いいよ、行こうか。」
僕と石田は部活に入ってないから放課後暇なことが多く、よく寄り道をしてから帰ったりする。
次の授業が始まるチャイムが鳴って、「それじゃまた後で。」と捨て台詞気味に石田は自分の席へと帰っていった。
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