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第六話 邂逅
目覚まし時計で目が覚める。梅雨の雨音がカーテンの外から締め切った窓を通してくぐもって聞こえている。起きたばかりでだるさを覚える体を少し捻り、時計のアラームを止める。
昨晩の両親の言い合いを思い出す。理性が感じられない、ただお互いのエゴを垂れ流しているだけのような喧騒。これからその二人がいる一階に降りていかなければならないのかと思うと気が滅入った。
一階へ降り洗面所で顔を洗いリビングへ入ると、父親がソファに座り新聞を読んでいる。隣接している台所では、母親が朝食の準備をしている。
僕に気付いた父親が「おはよう。」と声をかけてきた。「うん。」と気の抜けた返事を僕がすると、父親は時計を一瞥し「もう行くか。」と呟いて立ち上がった。
「どうしたの?今日は早いね。」
「ああ、ちょっとな。」
そう言ってソファに置かれた鞄を取って玄関へ行き、外へ出ていった。
あまり母親と同じ空間に居たくないのだろうな、と思う。いつもは僕と同じくらいの時間に朝食を食べてから出ていくのに。多分、食卓に何も置かれていないのを見るに食べていない。
台所に居る母親に朝の挨拶をする。
「あら、おはよう。」なんて気の抜けた返事を返された。さっきの僕と父親との会話から起きてきたのは気付いていただろうに。
程なく朝食が出てきたのでそれを素早く食べる。そして洗面所で歯を磨き、自分の部屋で学校への身支度をする。僕も父親同様、何となくすぐにでも外に出たかった。
母親に一声かけてから出ようとリビングに戻ると、食卓で母親が一人で朝食をとっているところだった。
「じゃあ、もう行くから。」
母親が少し目を丸くする。
「あら、今日は早いのね。」
「うん、ちょっとね。」
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