木曽馬君

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 ボクは木曽馬だ、サラブレッドになる木曽馬だ。  サラブレッドに憧れ、休日は中京競馬場、平日、祝日は名古屋競馬場に足しげく通っているんだ。  そして、競馬場ではパドックを夢見心地で眺めている。その先には、競馬場で活躍するサラブレッドがいるんだもん。  もう大興奮だよ。  あのサラブレッドの芝や土をえぐる、蹄の峻烈さ。  ボクは本当にサラブレッドになれるのだろうか?  -大丈夫-  ボクたち木曽馬は、古くは戦国時代、無敵を誇った武田の騎馬隊の騎乗馬だったんだから。  そこに木曽馬としての自負を持っているんだ。  その馬がサラブレッドになれない理由なんてない。  木曽馬は自らに言い聞かせるように、小さく呟き、自信を高める。  しかし、やはりサラブレッドのあのスタイリッシュで力強い馬体、自分とは違う大きい体躯、締まったお腹、華麗な身のこなし、リズミカルな歩様…。 全てをとっても、ボクの身体は小さいしスタイリッシュでもない、自分にはないサラブレッドへの強い憧れがパドックで見るたび、ターフの上を駆け抜けていくのを見るたび、この強い憧れを現実のものとしようとすると、小さい絶望にも包まれるんだ。  でも、やはりサラブレッドが良い!まだ小さいボクは、大きくなると必ずサラブレッドになると信じている。いや、そうなる。  そしてボクは再び誓う、きちんとしたジョッキーが跨るサラブレッドになるんだ。  そこでボクは試しにと、名古屋競馬場のパドックの中へ身体を滑り込ませようとしたが、警備員に制止されてしまう。  「すみませんが、これ以上は進入禁止なので」
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