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簡単に済ませやがる、将来ボクはサラブレッドになってグレードレースを制覇する馬になるんだぞ。
こんな警備員ごときが…これからを見ていろ!
しかし、ボクには気になることがある。木曽馬はポニーに分類され、小さい馬だという定義だ。
ボクがいくら小さいといっても、将来サラブレッドほどの馬格になるのだろうか?
それとなにより、木曽馬であるポニーと、サラブレッドは先祖が全く違うと聞いた。
これは、根本的な問題ではなかろうか。
そもそもが全く違う。
リアルに、トンビが鷹を生むなんてありえないし、やはりカエルの子はカエルなんじゃないか。
そういうことが思考に上るたびに、かなりな絶望感に見舞われる。
そして、その絶望感はいや増すように大きくなる。
そりゃ、木曽馬が…。
―すいません教えてください、ボクはサラブレッドになれるのでしょうか?教えてください、ボクはサラブレッドになりたいんです。絶対に絶対に、ターフの上を駆け巡りたいんです―
ボクは自分の心配を否定してもらいたく、コロナ明けの制限された観客人数の中、手あたり次第観客に助けを求めるように詰め寄ったんだ。
―ボクはサラブレッドになれますか―
まずは、よれよれのジャケットを着た中年男性に声を掛けた。
「ボクは見ての通りの木曽馬です。将来サラブレッドになる見込みはあるでしょうか?」
すると、その中年男性は怪訝そうな顔つきで答えたんだ。
「君、人間じゃないの?」
「いや、ボクは木曽馬です」
「木曽馬?」
「はい、こんな木曽馬でも、サラブレッドになりたいんです」
中年男性は、気味の悪いものでも見たような顔つきで、去ろうとするも気が咎めたのか、もう一度忠言する。
「でも、どっから見ても君は人間だよ」
このような質問を他の2人ぐらいにしたんだ。
答えは―君は馬じゃない人間だよ―
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