12人が本棚に入れています
本棚に追加
「私は会社…断熱材の会社での事務仕事に飽き飽きしていたんです。作業員たちのスケジュール調整、建築会社への協力要請またそのスケジュール調整、またはそれら人々からのクレーム対応、さらに原料の受け渡し、それもわたしがリフトでドラム缶を荷積みするんです。果ては、会議室の清掃、それの長机やパイプ椅子の準備に至るまで面倒臭くて周囲が嫌がることを、上司のパワハラまがいの強要で押し付けられ、心も体もボロボロでした。事務仕事でない仕事が山積みだったのです」
木曽原はそこで病衣の袖で涙をぬぐった。
「それでも飽き足らず、事務内でミスがあればわたしがそれを引被る。すべてがわたしの調整不足、力不足とされて、上司から揶揄され、怒鳴られの口撃を、こちらの頭がおかしくなるんじゃないかと思えるくらい浴びせかける。もうボディーブローですよ。徐々に徐々に疲弊していく」
そこで話しを一旦切ると、真剣な顔つきになって、木曽原は呻くように話し出す。
「そりゃ監獄ですよ。あなたもおっしゃられた通り女房子供がいます。会社を変えるにも年齢がいっているからどんな仕事になるか分からない。給料も今の半分ぐらいにはなると思うんですよ。女房に我慢してもらっても、子供にはお金がかかる。もう袋小路なんですよ」
最初のコメントを投稿しよう!