3人の章-9

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3人の章-9

純夏と拓磨… 2人と連絡を断つようにして 私は拠点をアメリカのサンディエゴに移した。 2人から離れた理由は2つ…。 1つ目は、純夏の幸せを守りたかったためだ。 拓磨と知り合い、肌を重ねることによって 純夏が拓磨をどれくらい好きなのかが なぜか痛いほどわかったからだった。 そしてもう1つは 私自身の拓磨への思いを断ち切ることだった。 このまま日本にいたら 拓磨を忘れられなくなりそうな気がしたから…。 半年分の仕事を1週間で消化して 当面の仕事を終えることができた。 事務所はそのままにして拠点を移すと 橘に伝えた。 当然、反対されたし、引き止められたが 話し合いを重ねて 1年間アメリカを拠点に活動することを 了承してもらった。 事務所のスタッフを維持するための仕事を アメリカで継続することが条件だった。 純夏と拓磨… この2人の幸せを壊すつもりはなかった。 なのに、私の一時の気まぐれで 拓磨と寝てしまったのは反省以外にない。 拓磨を好きだと思ったのは本当だけど、 それ以上に私は純夏が大切だったから…。 アメリカに立つ前に純夏の家に行った。 いつものように母の手伝いをしながら 料理を作り、3人で食べて いつものように純夏の部屋に泊まって 思う存分純夏を抱いた。 純夏が感じて、乱れて、達するのを見ながら 幸せだなと感じる反面、 私はたまらなく寂しくなった。 1人でこの先、やっていけるのだろうか…? …すっかりダメな人間になっている。 しっかりしろ、留理! 私は自分の気持ちに尻叩きするように 私がいない間、純夏が寂しくないように 拓磨と仲良くしろと純夏に話し、 私の腕の中で純夏が眠りにつくと、 そっと下に降りた。 台所に行き、食器棚から 波佐見焼の自分のお茶碗を取り出す。 これは…持って行くね。 これを持っていることで ここの家族と繋がっているような気持ちになる。 当分は私のお守りにさせてね。 私はお茶碗をそっとカバンにしまうと 純夏の部屋に戻った。 翌日、まだ純夏が寝ているうちに 自分のマンションに戻った。 母には早い時間からの仕事だと言ったが 長居すると、なんだか寂しさが募りそうで いつものように大崎家を出た。 歩きながらLINEのアカウントを削除し、 携帯の解約をオンラインでした。 新しい携帯はもう用意してあるが、 純夏と拓磨には知らせていない。 マンションの電話も解約してあるので 事務所の橘とサトコには新しい携帯に連絡するように 伝えてある。 純夏と拓磨にはこの携帯のことも もちろんアメリカ行きのことも知らせないように 釘を刺している。 まあ、橘は…情にほだされてアメリカ、くらいは 言ってしまいそうだけど(苦笑) 私がここからいなくなったことで 2人は修復できるだろうか…。 それは2人に任せよう。 頑張るのよ、純夏。 手を離しちゃダメよ、拓磨。 私も…出発するから。
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