純夏の章-10

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純夏の章-10

拓磨は有休を取っていったい どこに行ってるんだろう…? 純夏は拓磨の行き先の見当がつかなかった。 実家に帰ってるのかな…? ならば、どうして私に 言ってくれなかったんだろう? 拓磨の実家は静岡だとは聞いているが、 まだ挨拶に行ったことはない。 実家の連絡先はわからなかった。 念のため、仕事の帰りに拓磨のマンションに 寄ってみたが、やっぱり留守だった。 拓磨…何があったの…?? 純夏は再び 『拓磨、今どこ?』とLINEを入れてみた。 …既読にならない。 拓磨の友達に連絡してみようかとも思ったが、 純夏に知らせることなく有休を取ったことを 考えると、なんとなく連絡しない方が いいようにも思えた。 これ以上どうすることもできないまま、 純夏は家に戻った。 やるせない気持ちで胸がいっぱいになる…。 「おかえり。純夏、ご飯は?」 母の顔を見たら泣きそうになったが、 ぐっとこらえた。 「ごめん、…今日は寝るわ」 「具合悪いの?」 「ううん、ちょっと疲れただけ…」 「そう…。じゃあ寝なさい」 こんな時、母は何も聞かない。 純夏が自分から話すまでそっとしておいてくれる。 「ごめんね、お母さん。 ハヤシライス明日食べるから」 「ゆっくり休んで。おやすみ、純夏」 「おやすみなさい」 洗面所でメイクを落とし、歯を磨いて 部屋に入って、部屋着に着替えると 純夏はそのままベッドに 倒れ込むように横たわった。 拓磨…何があったの…? 何だろう、この不安な気持ちは…。 なんだか胸がざわつく。 何かが起きているような気がする。 サイドテーブルに置いた携帯の画面が フッと明るくなった。 そこには拓磨からメッセージが…。 『ごめん、純夏。今成田に着いたとこ』 そのメッセージに気づくことなく 純夏は眠りについていた…。
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