拓磨の章-1

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拓磨の章-1

この調子なら、なんとかデートに 遅れずに行けそうだ…。 拓磨はホッと胸を撫で下ろした。 まったく出版社というヤツは終わりの時間が ないのか?と思えるくらい夜が長い。 その分朝遅くの出勤が認められているのだが…。 いわゆるフレックス制が早々と導入されは したものの、勤務時間はまともに申告すれば 間違いなくブラック企業だ。 拓磨は遅い出勤は選ばず、9時出社にしている。 どうも朝遅いのは体のリズムが狂いやすくて 苦手だからだ。 早く出たところで、残業も多く、 半分は申告していない残業もあったりするが、 早く出社すれば、定期的に定時で 帰れる日を作りやすいのもある。 なぜ定時で帰りたいかと言うと… 「おお〜!今日も純夏ちゃんはかわいいのぅ」 突然、後ろから同僚の里中剛(さとなかつよし)に 声をかけられた。 「人の待ち受け覗くなよ、剛」 「今日デートだろ?裏山〜」 「何で知ってんだよ」 「いやいや、お前のカッコ見てれば誰でも わかるっしょ(笑)」 あ…ヤバい…。 確かに今日のシャツはドレスシャツに近い 上質なモノだし、スーツも… って、完全にバレてるのか、俺(焦) 「なあなあ、今日のデートはどこ行くの?」 「うるさい!言うか!!」 剛を追い払うような言動を取りながらも デレデレした顔してんだろうなあ、俺…。 確かに純夏はかわいい。 かわいいだけじゃなくて、話もおもしろいし、 優しくて、気が利いてて、 ちょっとエッチで(これは完全に俺の好みだ) 毎日会っていたいくらい好きだ。 今日は2人の共通の趣味である映画に行く。 その前にうまいメシでも食べて、 映画見て…純夏も食べる、と。 いかん…デレデレが止まらない(ピンチ) 「よし、打ち合わせ行くぞ、剛!」 「おおお…張り切っちゃって〜はいよっ」 足取りも軽く、拓磨は剛と共に 打ち合わせブースへと向かった。
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