拓磨の章-2

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拓磨の章-2

シネコンのあるビルは 最上階にレストラン街がある。 これから見る映画はアクション映画だから、 その気分に合わせて、 アメリカンダイナーでビールと共に 熱々のフィッシュ&チップスや メキシカンタコスなどをつまんだ。 純夏も俺もほとんど好き嫌いはない。 そして純夏はよく笑い、よく食べる。 そこがまた好きなところ、だ。 だが、今夜の純夏は少しぼんやりとしてた。 たしか今日は書架整理の日…だったよな。 あれだけの在庫の整理だなんて、骨が折れるような 作業に違いない。  疲れているんだろうな…。 なのに、その気怠い感じが妙に色っぽくて ちょっとムラムラする。 「寝るなよ〜」とワザとおどけて言ってみたが 「アクション映画で寝ないよ〜!」と 純夏が俺の右腕に自分の左腕を絡ませてきて、 余計にグッときてしまう。 この腕にぎゅっとしがみつく仕草は… 抱いて欲しい、のサインだ。 …いかん、拓磨の拓磨、鎮まれよ(おいおい) 映画はなかなか面白かったが、 その後に気持ちがいってしまって、半分しか 頭に入ってこない感じだった。 それは純夏も同じだったのかな…? 映画の後、俺のマンションに2人で帰る。 部屋に入ると同時に、俺たちは もつれこむようにベッドにダイブした。 そのまま、激しく愛し合う。 元々純夏は敏感で感じやすい方だが、 今夜はとくにそれがすごかった。 疲れはそっちの神経も過敏にしてしまうのだろうか? このまま純夏を家に帰したくなくて 泊まっていくか?と聞くと、 そうしようかな…とかわいい返事が返ってきた。 そろそろ純夏の母に挨拶に行かないとな…。 付き合って2年。結婚も真剣に考えているし、 このままずっとこの幸せが続いていくと この時の俺は迷うことなくそう思っていた。 あいつと出会うまでは…
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