拓磨の章-3

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拓磨の章-3

出会いは突然訪れた。 普段であれば、こんな出会いなんか あるわけがない。 仕事で、しかも俺の所属する経理部の担当ではない 写真集の撮影現場で…あいつに出会ったんだから。 朝、出社すると課長に早速呼ばれた。 「坂本、来週の土曜日に出張してくれ」 「え…?出張ですか…」 「ああ。長崎だ」 「長崎!?」 俺は出版社の経理部にいる。 監査担当でない限りは、出張はおろか、 外回りなどの外出もほとんどない部署だ。 それでも、一般の会社と違って たまに経費関連の調査等で撮影に同行 することはある。 「写真集の撮影同行だが、被写体が長崎を 指定していてな」 課長は有名な女優の名前を挙げた。 毎日名前や顔を見ない日はないほど 勢いのある売れっ子である。 「カメラマンは?」 「松本留理、だ」 「新人ですか?」 うちの会社では使ったことのないカメラマンだった。 「最近フリーになったカメラマンだが、被写体から ご指名が多いカメラマンだ」 「へぇ…」 「実はもう1本このカメラマンで 撮る仕事があるんだが、撮影地が…」 「はい…」 「イスタンブール指定だ」 「イスタンブール!?」 「イスタンブールの同行はないから安心しろ」 「はあ…びっくりしました」 「長崎の同行の時に、イスタンブールの 撮影スケジュールをこのカメラマンに 確認して概算して欲しいんだ」 「承知しました。」 「悪いな坂本、デートの邪魔して。 彼女に謝っておいてくれ」 「あ、はい…(苦笑)」 課長にまでバレてるのか…(焦) わかりやすいもんな、俺。 それにしても、ホントにデートだったのに。 純夏とお泊まりドライブデートが台無しだ…。 (あ〜あ…)
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