拓磨の章-7

1/1
前へ
/42ページ
次へ

拓磨の章-7

誘われるままに、俺は留理の部屋へ行った。 「冷蔵庫の物、お好きな飲み物をどうぞ」 「ありがとう。松本さんは…」 「留理、でいいですよ、拓磨さん」 留理の拓磨さん、の響きになぜかドキドキする。 俺は冷蔵庫かビールをもらい、 留理はカバンから透明の液体が入ったビンを 取り出した。 「それは…?」 「テキーラです。不思議と悪酔いしないので 撮影の時は持ち歩いてるんです」 「お酒、強いんですね」 「拓磨さんこそ。けっこうちゃんぽんしてません? 飲み方…」 やっぱり飲み過ぎていたか…。 けれど、どこか頭の中は冷えていて、 俺は今、留理に欲情している…。 「飲んでみます?テキーラ」 「はい…」 「甘いけど強いからこれで割りましょうか」 留理は冷蔵庫からオレンジジュースを取り出す。 「グレナデンシロップがないけど、 一応テキーラ・サンライズ、です」 グラスにテキーラ、それからオレンジジュースを 注いだそれは、見た目はほぼ オレンジジュースのようだったが、 「うまい…ですね」 「そう?良かった」 留理はテキーラをストレートで くいっと飲むと微笑んだ。 「もう一杯付き合ってくれますか?彼女に 申し訳ないけど…」 「え…僕に彼女がいるって、どうして…?」 「拓磨さんくらいステキな方なら普通いるでしょ?」 ふと、留理と目が合ってしまう。 留理の瞳に俺が映っているのが見える。 しばらくその瞳を見つめていたら、 その影はゆっくりと近づいてきて… 留理の唇が俺の唇を包み込んだ。 何の香りだろう…?すずらんのような… どこか冷静に分析しているもう1人の俺がいる。 「付き合って下さってありがとう、拓磨さん…」 留理が唇を離してその先を言うのを制するように 俺は留理の頭を引き寄せて、唇を塞いだ。 とにかく留理が欲しかった。 2人は激しくキスを交わし合いながら そのままベッドにもつれ込んだ…。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加