留理の章-4

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留理の章-4

佐倉リエの写真集の仕事で 私は都内のスタジオに朝から詰めていた。 少し前から花をモチーフにいろんな被写体を 撮っていくシリーズを始めていたが、 彼女もそのシリーズとして撮ることにした。 確かにかわいいし、売れてる勢いも感じるが 私自身は興味のない被写体だった。 やたらと色目を使ってくるが、完全に無視した。 抱いてもつまんない相手は2度と抱かない。 撮影が終わり、機材を片付けていると リエが近づいてきた。 「ねえ…この後時間ある?」 「いえ、事務所に戻って仕事があるので」 「じゃあ、夜会わない?」 「すみません、約束があるんです」 「約束?誰と??」 「彼氏、です」 彼氏、の言葉にリエは言葉を飲み込む。 私をレズビアンだと思っていたらしい(笑) 「…ウソ。そんなわけないでしょ!」 そこへ絶妙のタイミングで橘がやってきた。 私は橘の腕を掴んでリエに言った。 「この人と」 リエは顔を歪めて踵を返すと走っていった。 「…留理さん、俺を利用しましたね」 「ごめん、橘。今度奢るから」 「眠民亭のシュウマイで手を打ちますよ」 「了解。食べ放題にしてあげる」 ガッツポーズの橘に思わず笑ってしまう。 こういう時、うちのスタッフたちはあえて 細かいことを聞いてはこない。 薄々気づいているのかもしれないけど。 いろいろな意味で私は仲間に恵まれている…。 なんだか純夏に会いたくなった。 これから手土産でも買って純夏の家に行こう。 純夏がいなくても、純夏の母に会えるだけでも かまわない。 あの家は完全に私の癒し、だな…。 ふふっと私は笑いながら帰り支度を進めた。
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