留理の章-6

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留理の章-6

拓磨と寝て、想定外だったことが2つあった。 1つ目は、拓磨が私に本気になったこと。 2つ目は、私も拓磨を好きになったこと…。 体の相性も良かった。 いつも相手をイカせてばかりだから こんなに自分が絶頂に達するのも久しぶりだった。 拓磨が上り詰めるタイミングもほぼ一緒なのも なんだか幸せに感じたのが不思議だった。 独りよがりな気持ちがないセックスは こんなに心地良いものなんだ…。 ただ、拓磨とは今夜でおしまいにするつもりだった。 私は拓磨以上に純夏のことが大切なのだ。 拓磨とこんなことになったなどと 純夏に言うつもりはもちろんない。 純夏はよっぽどのことがない限り、 拓磨に私を紹介することなんかないはず。 このまま、私が純夏の友達だなんて 拓磨に知られることなく終わりにしなければ。 あなたのことは好きだけど、 思い出をひとつもらえれば、それでいいのよ。 だから今夜のことはなかったことに…。 「なかったことにだなんて…いやだ」 そういうわけにはいかないのよ、拓磨。 純夏のことはどうするつもりなの? 「お優しい方なんですね…」 そう、あなたは確かに優しいわ。 けれど、それはとても残酷な優しさでしょう? 「とにかく、また明日。…おやすみなさい」 半ば無理矢理拓磨を部屋に返した。 正直な話、このままそばにいてもらうと 情が湧かないとも限らない。 肩を落として部屋を出ていく拓磨の背中は 寂しがり屋の仔犬のようだった。 バイバイ、拓磨。 もう浮気はこれっきりにするのよ。 純夏を泣かしたりしたら… マジで殺すからね。 私はわけのわからないことを 真剣に思っていた…。
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