留理の章-7

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留理の章-7

翌日、私はなるべく拓磨とは 接触しない様に努めた。 次回のイスタンブールでの 撮影スケジュールもメールで送ると伝え、 帰りの飛行機も1本ずらして 拓磨と一緒に帰らなかった。 LINEを教えてしまったが これは未読スルーすればいいし、 そのうちブロックすれば済む話だ。 落胆する拓磨を見て胸がチクリと痛んだが これはあなたと私が愛する純夏のためなのだ、 と自分に言い聞かせた。 それに、一晩限りの相手には不足していない。 拓磨と別れて私は純夏に買う土産を探しに 店を見てまわった。 小さな陶芸の店で、可愛らしい波佐見焼の ご飯茶碗を見つけたので、純夏の母の分も… と思い、2つ買おうとして、 ちょっと考えて3つにした。 私と純夏と純夏の母の分。(笑) 家族分の茶碗のようで、なんだか嬉しくなる。 ここに拓磨の分は…ない、と。 後はカステラを買って、 今日は純夏の家に行こうと決めた。 純夏がいなくても母と話すだけでもいい。 そう思う頃には、私の中の拓磨の存在が だいぶん薄くなっていった。 帰りの飛行機の中で 私はタブレットを取り出し、 イスタンブールの撮影日程をメールにして 早速拓磨の会社に送った。 これで、よし…と。 一仕事終えて、体も心にも充実感が宿る。 …楽しかったな、長崎…。 今度は純夏と純夏の母と女3人で来るのも いいかもしれない。 その時は健全な家族旅行で。(笑) 窓の外の雲の流れを見ながら 私はひとりそんなことを考えていた。
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