留理の章-10

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留理の章-10

イスタンブールでの撮影がスタートした。 気候はそれほど日本と差はないものの、 湿度が高いためか、時々霧が発生することが あり、外での撮影では霧で中断することが あったが、概ね順調だった。 トルコの人々は親日家が多いのもあって、 あちこちで歓迎されたり、親切にされたりも して、過ごしやすいのも良かった。 そんな中… ん?純夏からLINEだ。 『留理、仕事忙しいの?』 そっか、純夏に連絡してなかったな…。 『まあまあかな』 忙しい時の私の返し方、だ。 『今夜、ハヤシライスをお母さんが作るんだけど、 留理、来る?』 あ〜…美里さんのハヤシライス美味しいんだよね〜… 『うわ…行きたい〜ところなんだけどさ…』 純夏から?のスタンプ。 『今、イスタンブールなんだよね、撮影で』 純夏からびっくりマークのスタンプが(笑) 『了解、仕事頑張れ〜』 留理はサンキューのスタンプを押した。 日本とトルコは時差が6時間ある。 こっちは今昼間だけど、日本は夕飯時なのね…。 そんなことを思っていた私に ゆっくりと近づいてくる影があった。 「留理さん…」 現れたのは、拓磨だった。 びっくりしたのが半分、 どことなく予想していたのが半分…。 会いたかったのが半分、 会いたくなかったのが半分…。 「どうしてここまで…」 「君に…留理さんに会いたかったんだ」 まったく、あなたって人は… 「困った人ね、拓磨さんは…」 そう言った途端、拓磨に引き寄せられ 強く抱き締められた。 「こんな気持ちは初めてなんだ」 私もよ…。こんなことになるなんて。 でも、なんだか腹をくくる覚悟もできたけど。 「…後悔することになるわよ」 「どうして?」 それはもうすぐ、わかること。 あなたの秘密も 純夏の秘密も 私の秘密も もうすぐ、すべてわかってしまう…。
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