3人の章-4

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3人の章-4

純夏と拓磨はしばらくお互いを見つめていた。 なんだろう… 拓磨に会いたかったはずなのに 目の前にいるのは見知らぬ人のようだった。 この人は…私じゃなくて留理を好きなんだ…。 まだ拓磨から何も聞いていないのに、 純夏は2人に何があったのかを感じ取っていた。 …俺は純夏と結婚しようと思っていた。 留理に会うあの日までは…。 ただ、留理を愛しているのか、 欲望のままに体を求めただけなのかが まだわからないんだ…。 しばらくの沈黙の後、 声を絞り出すように拓磨が言った。 「体調は…大丈夫なのか?」 「うん…」 「俺の…せいか?」 「それは、どういう意味?」 「え…」 再び、重く流れる沈黙… 「留理のことを…拓磨はどう思っているの…?」 「どう思ってるって…」 留理が純夏に話したのか? 俺と留理のあのことを… 「留理は何にも言ってないわ。」 …!? 俺の心の声が聞こえてるのか?? 「俺は純夏が好きだ。それは今も、そして これからも変わらない。だけど…」 「だけど…?」  拓磨は言葉を飲み込んだ。 俺は留理のことが… いや…どうしたいんだ、俺は…?? 頭が混乱している…。 そのまま拓磨は無言で立ち尽くしていた。 「…今日はもう帰って」 「純夏…」 純夏は凍りついたような表情のまま、 ベッドに潜りこんだ。 そして拓磨に背を向けたまま、小さな声で言った。 「…留理を諦めて、拓磨」 「えっ…?」 諦めて?…純夏、何を言おうとしてるんだ?? その瞬間、純夏は耳を疑うような言葉を 口にした。 「留理は…あなたには渡さない。」
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