3人の章-5

1/1
前へ
/42ページ
次へ

3人の章-5

純夏はもうわかってしまったんだ…。 私と拓磨に何があったのかを。 そして、私と純夏のことを拓磨が知ってしまう のは時間の問題かもしれない。 不思議なくらい、留理は落ち着いていた。 拓磨と関係を持ってしまった時から、 自分はどうするべきかも、決めていた。 ただ、それを実行するのには 少し時間がかかってしまう。 その間をどうするべきなのかを考えなければ。 そして、その決断が実行される時までは 出来るだけ純夏のそばにいたかった。 純夏が私を許してくれるのなら…。 とにかく動き出そう。 仕事のことも含めて…。 留理は事務所へと足を早めた。 純夏の部屋から出た拓磨は とぼとぼと歩いていた。 会社に戻る…べきだよな。 だが、頭の中は真っ白で何も考えられなかった。 ただただ、純夏の言葉が頭の中を駆け巡る。 「留理は…あなたには渡さない」 どういう意味なんだ、純夏。 渡さないって、留理はおまえの何なんだ? …留理に聞けばわかることなのかもしれない。 聞いて、それから…どうするんだ? 「あ〜〜〜!!!」 思わず拓磨は声を上げて頭を抱えた。 こんなに自分は優柔不断な人間だったのか。 頭のどこかで、純夏も留理も失いたくないと 考えてしまう自分にうんざりする。 「俺も…帰るか、今日は」 拓磨は力なく携帯を取り出すと 会社に電話をかけた。 純夏はベッドで泣いていた。 なぜ自分は泣いてるんだろう…? 拓磨を失うことになった悲しさなのか? それとも、やっぱり留理を手放すことができない いやらしい自分に腹が立っているのか…? 不思議と留理に腹を立てる気にはならなかった。 拓磨には…?腹が立つことは、 留理と寝たことではなかった。 私から留理を奪おうとすること、にだった。 「やっぱり私、頭がおかしいのかも…」 純夏は泣きながらそう思っていた…。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加