純夏の章-4

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純夏の章-4

「どうした?疲れてる??」 拓磨に顔を覗き込まれて、純夏は ハッと我に返った。 食事中に考え事をしていたらしく どうもぼんやりしていたようだ。 「ううん、大丈夫」 「書架整理後だもんな、体疲れたんだろ?」 拓磨が笑って純夏の肩を揉む動作をする。 ビクンと体の真ん中が疼く感覚…。 まだ…残ってるのかも。 「映画、寝ちゃうなよ」 「大丈夫!アクション映画で寝ないって!」 シネコンのあるビルの最上階にあるレストランで 食事をしてから映画に向かう。 純夏は歩きながら拓磨の右腕に 自分の腕を絡めた。 シネコンの入口を2人でくぐりながら 映画の後、拓磨に抱いてもらおう…と 純夏は思っていた。 体に残る留理の痕跡を 拓磨に上書きしてもらいたい…。 「ん?何か言った??」 「なんでもないよ」 そう言いながら純夏は拓磨のがっしりとした腕に ぎゅっとしがみついた。 たぶん…私の思ってることは伝わったはず。 映画は手に汗握る展開が楽しめたが、 純夏の頭の中はその後のことに意識が飛んでいた。 純夏の思い通り、映画の後は 拓磨のマンションで甘い時を過ごした。 拓磨のセックスは…とても誠実なものだと思う。 奇抜な事はしないが、愛情に溢れていて、丁寧で、 手を抜くこともない、 拓磨の性格そのもののような…。 それでいて独りよがりではなく、 純夏の気持ちをいつも大切にしてくれる。 本当にこの人が好きだ…。 「…このまま泊まってく?」 純夏に腕枕をしながら拓磨がささやいた。 「うん…。そうしようかな」 母にLINEしておこう。 純夏はサイドテーブルに置いた携帯を取り 上半身を起こした。  後ろから拓磨が純夏を包むように抱き寄せる。 「おかあさんに挨拶に行かないとな」 「挨拶?」 「娘さんを僕に下さいって…」 「私も…拓磨のご両親に挨拶に行かないとね」 「喜ぶよ、うちの親。一度連れて来なさいって この前からうるさくてさ」 「ホントに?嬉しいなあ」 私は幸せだ…。 この人はきっと私を幸せにしてくれる。 ううん、2人で思い合って生きていける…。 …留理の存在は…? 私、留理から離れられるんだろうか…。
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