いつわり姫のなみだ

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 城の大広間に連れて行かれたソフィア姫の目に映ったのは、赤いベルベッドの玉座に座る黄金の冠をかぶったシャーロットでした。 「シャーロット! あなたからも言ってやって! 本物のソフィア姫だって」  シャーロットは玉座を降り、ソフィア姫の前まで歩みを進め微笑みながら言いました。 「なぜあなたは、私の名前を語るのです?」 「何を言っているの? シャーロット。悪い冗談でしょう?」 「冗談を言っているのはあなたでしょう? シスター」 「どういうつもりなのよ、シャーロット! ねえ、あなたたち、どっちが本物の姫かなんて見たらわかるでしょう? このいつわりのお姫様には気品なんかないわ」  ソフィア姫が睨みつけたのは侍女頭。 「少なくともソフィア姫は、あなたよりも気品があり慈愛に満ち溢れた素敵な姫様ですわ」  侍女頭は本物のソフィア姫を嘲笑しました。 「私達がお仕えするのはでございます。あなたのように心の(いや)しい者が姫の名前を語るだなんて許されぬこと」  侍女たちが口々にソフィア姫を(ののし)りました。 「皆さん、そんなに責めないであげて。ここにいるのは可哀そうなシスターです。きっとお腹が空いて気が立っているのかもしれません。料理長に言ってパンの残りを持ってこさせましょう。それを持ち教会にお帰りなさい、シャーロット」  慈愛に満ちた笑顔で自分の手を握ろうとしたシャーロットを、ソフィア姫は払いのけ憎悪の目で睨みつけました。
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