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「可哀そうなシスターはあなたでしょう、シャーロット。あんな貧しい暮らし、確かに辛かったでしょうね。ガヤガヤと騒がしくて粗末な食事に畑仕事に水汲み。今ならまだ許してあげるわ。処罰も与えないわ。だってあの暮らしこそがまさに処罰ですものね。さあ、すぐにこの縄をほどきなさい、シャーロット!」
「ああ、可哀そうなシャーロット。私に恨みがあるのはわかります、あなたのことは調べておりました」
諦めに似たため息をつき玉座に戻ったシャーロットは側にいる執事に目配せをしました。
執事は姫の名を語り偽物となったソフィア姫に近づき見下ろすと静かに話し始めました。
「シスターシャーロット。幼い頃に両親を亡くしましたね、その理由をあなたは覚えておいでですか?」
「知るわけがないじゃない、だって私のことじゃないんですもの!」
「それはお気の毒に。きっとあまりにも惨たらしい話でしたから記憶の彼方に封じ込めてしまったんでしょうね。ここにいるソフィア姫に処刑されたのですから」
「っ、なんですって?」
玉座に座るシャーロットのエメラルドグリーンの瞳は冷たい瞳をしていました。
その目はじっとソフィア姫を見下ろしています。
「私は覚えていますわ、シスターシャーロット。あなたのご両親は、このお城に仕えておりました。とてもお優しい方々でしたが、ある日この私に向かって『自分の娘にそっくりだ』なんて言ったのです。よりにもよって君主である姫とそれに仕える従者の娘が似ているなど以ての外。『嘘偽りを申すな』と激怒した私が斬首刑にしたのです」
ソフィア姫は記憶を呼び起こそうとしましたが思い出せません。
何しろ本当に大勢の人間に処罰を下し、死刑としてきたのです。
その中の二人を覚えていることなど到底無理なことでした。
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