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一方、教会のソフィア姫は夕飯に出てきた硬く黒いパンと、一欠けのチーズ、具のないスープを見てガッカリしていました。
いつもの豪華な夕食とは違う蝋燭の仄暗い明かりの中で慎ましやかに祈りを捧げて、その日一日の小さな喜びや幸せを語るシスターたちにうんざりしました。
(どうして静かに食べられないのかしら?)
「シスターシャーロット、どうしたの? どこか具合でも悪いの?」
「……別に、ただ頭が痛いのであまりお話したくないの」
「まあ、それなら夕飯を食べたら早くおやすみなさい。眠る前の祈りだけは忘れないように」
「ええ、わかったわ」
不愛想にため息をつき、部屋へと消えて行くシャーロットに周りのシスターたちは首を傾げます。
「あんなにお話好きなシャーロットが喋らないなんて、よっぽど具合が悪いのかもしれないわ」
「すぐに良くなるといいのだけれど。明日の畑仕事は私が代わってあげるわ。この間私が具合が悪い時に変わってくれたんだもの」
「水汲みは私が行ってあげる、とにかく明日一日休んで貰って明後日からまた明るく働いてもらいましょう」
一番年下で明るく働き者のシャーロットをシスターたちは可愛がっていました。
ベッドからその話を聞いていたソフィア姫はホッと胸を撫でおろします。
(畑仕事やら水汲みなんて冗談じゃない、私はただ城以外の生活を知りたかっただけなんだから。どこが楽しい場所よ、シャーロットの嘘つきめ)
硬いベッド、硬い枕。
いつもとはまるで違う状況に何度寝返りを打って、もなかなか寝付くことができないソフィア姫はため息をつきました。
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