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「私も頂きます、晟殿」
渋々といった様子で天ぷらを食べる小太郎をちらりと見ながら、狛が声を出す。
晟は嬉しそうに振り向いた。
「さーすが狛ちゃーん! 一口も食わない小童たちとは大違いだね! さあさ、食べて食べて!」
「あっ、露木様、俺も食べますよ! 近臣のくせに小童なのは嫌ですからねー」
と、嫌味たっぷりに隣を見ながら猪助が手を挙げる。
それを伊月が呆れ顔で静観している。
颯はおどおどと一人の近臣に視線を注ぐ。
先の騒動が落ち着いたばかりの燎は、不機嫌そうな顔で黙々と食している。
そして案の定と言わんばかりに、颯の視線の先で箱膳が音を立て揺れた。
「誰が小童だっておいこら犬っころ!」
「だひゃらいひゅっころよびゅな!」
「だから口の中のもん食ってから喋れっつーんだよ!」
「ひゃれがしょうひゃせてんでしゅか、きょわっぱ!」
「今のは完全に聞こえたぞっ、もういっぺん言ってみやがれ!」
日常茶飯事、いつもの喧騒が始まった。
「はぁ、なんであの二人はいつもこうなのかしら」
「本当、犬猿の仲だね……」
大きく溜息を吐く伊月の隣で、颯も苦笑してぽつりと呟く。
すると眉間の皺を深くした燎もそこに混ざってきた。
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