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「犬猿にも値しないでしょ。犬以下、ほんと低能過ぎて、食欲も失せる」
「隊長、大丈夫ですか? 明日から今まで通りに……」
その言葉を冗談ともとれず、朝火が心配そうに声をかけた。
燎はふんと鼻を鳴らして、今なお繰り広げられている喧騒を疎まし気に見ながら、少し声を大にして返事する。
「本当、そうしたいけど。けど頭領と同じ席で食したいからさ、どっちかっていえば低能二人がどっか行ってくれるといいんだけど!」
伊月と颯が唖然と燎を見る。
夕火と朝火はあわあわと隊長と近臣とを交互に見た。勿論、隊長の声が聞こえたらしい二人の近臣が剣呑な目を向けてきている。
「た、隊長!」
これ以上騒ぎを大きくしてどうするんですか、という思いが込められた呼びかけにも燎は平然と最後の一口を運び、お茶を啜り始めた。
「これは駄目なやつね、私はご馳走様」
爆発寸前の空気に冷めた目を送って、伊月が席を立つ。
それにならうかのように颯も慌ててお茶を飲み干し、伊月の後を追いかけた。
そうして食事の間を二人が出たところで、激しい舌戦が始まったのである。
「おいこらっ、しれっと何言ってんだこの女男!」
「女男? どこをどう見たら女に見えるわけ? 低能の目って認識能力も低かったんだ、それは残念だね」
「んっだとこら! こいつは低能のぼんくらかもしれねぇが、俺はまともだっつーの!」
「ちょっと、誰がぼんくらですか!」
「あ? 雉の一羽も捕まえられないやつに、ぼんくらの言葉以外何があるってんだ犬っころ!」
「犬っころ呼ぶな!」
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