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「ちょっと、何泣いてんのよ!」
驚いたような声が掛かって、颯ははっと我に返った。
ごめんごめん、と呟きながら目尻を拭う。
「なんか、いろいろ思い出しちゃって……どうして小太郎様は、風魔一党を解散しちゃったのかな」
「え、もしかしてあんた反対派だったの?」
その言葉に、颯は慌てたように大きく首を振った。
「ち、違うよ! 僕は別に反対してるとかそういうわけじゃないよ! た、ただ、なんていうかな……僕達風魔一党って、北条家を護る為に存在していたでしょ? なんかほら、変に村を襲うとか、誰かの命を無造作に奪う、とかそういう怖い忍ではなかったじゃない。なんか、好きだったんだよね、陰ながら北条家を護ってる感じ……」
そう言って、自分の手のひらを見た。
自分も誰かを護れるようになりたい、と思った日のことを。
風魔一党の一員となって、小田原城に就いた時は、不審者の侵入はないかの巡回ばかりだった。それでもやはり、陰ながら北条家を護っている自分、というどこか自惚れにも似たやりがいを感じていた。
しかし、隣からの返答に颯は息を呑んだ。
「颯って、意外と怖いわね」
冗談にも聞こえない、笑みを消した声音だった。
「え、ぼ、僕が……? なんで?」
「さあ、なんでかしら……直感? いつもおどおどしていて、弱気な子って思っていたんだけど、どうやら私の勘違いだったみたい」
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