5人が本棚に入れています
本棚に追加
少年はぐっと息を呑み込んだ。込み上げた感情を苦い唾と共に喉の奥へと追いやる。ここで言い返せば、自分が惨めにしかならないように思えた。
しかし──
「そう言うな、魁。結果として捕まえられたのだから良しとしようじゃないか」
予想だにしない擁護の声が聞こえ、言わずもがな少年の目はきらきらと輝いた。
「そうですよね! そうですよね!?」
成果はさておき、味方を得た気分にふふんと鼻を鳴らして青年を見れば、呆れたような目がじっとりと睨んできて、くわりと反論の牙を向けられた。
「はあ? お前どこまで単純なんだよ? 雉のひとつも仕留められねえんじゃ、忍も務まらねぇぜ犬っころ。それに、狛もいい加減こいつに甘過ぎだぜ」
「ゔっ……」
「確かにそれも一理あるな……朝餉を終えたら、猪助は修行に励むべきだ。私が稽古をつけよう」
「げっ……」
あまりの正論、それに加え味方がいなくなってしまった。
顔を引き攣らせた少年の口からは、蛙のような声しか出なかった。
「おぉーい、雉の声が聞こえたが無事に捕まえたかぁー!」
不意に野太い声が聞こえ、一同ははたと顔を上げた。
声のした方へ視線を向けると、風魔の屋敷に仕える老僕の玄間辰次が林の向こうで大きく右手を振っている。
それに応え、一同もまた手を振り返した。
「おー! 無事に捕ったぞー! ……俺と狛がな」
一人の手のひらがぐっと拳に変わった──
最初のコメントを投稿しよう!