一◇春風駘蕩

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 少年はぐっと息を呑み込んだ。込み上げた感情を苦い唾と共に喉の奥へと追いやる。ここで言い返せば、自分が惨めにしかならないように思えた。  しかし── 「そう言うな、魁。結果として捕まえられたのだから良しとしようじゃないか」  予想だにしない擁護の声が聞こえ、言わずもがな少年の目はきらきらと輝いた。 「そうですよね! そうですよね!?」  成果はさておき、味方を得た気分にふふんと鼻を鳴らして青年を見れば、呆れたような目がじっとりと睨んできて、くわりと反論の牙を向けられた。 「はあ? お前どこまで単純なんだよ? (きじ)のひとつも仕留められねえんじゃ、忍も務まらねぇぜ犬っころ。それに、狛もいい加減こいつに甘過ぎだぜ」 「ゔっ……」 「確かにそれも一理あるな……朝餉を終えたら、猪助は修行に励むべきだ。私が稽古をつけよう」 「げっ……」  あまりの正論、それに加え味方がいなくなってしまった。  顔を引き攣らせた少年の口からは、蛙のような声しか出なかった。 「おぉーい、雉の声が聞こえたが無事に捕まえたかぁー!」  不意に野太い声が聞こえ、一同ははたと顔を上げた。  声のした方へ視線を向けると、風魔の屋敷に仕える老僕の玄間辰次(げんまたつじ)が林の向こうで大きく右手を振っている。  それに応え、一同もまた手を振り返した。 「おー! 無事に捕ったぞー! ……がな」  一人の手のひらがぐっと拳に変わった──
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