幸せの国

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「ありがとう、荷物はそんなに重くないから大丈夫だよ。でも、道案内は頼もうかな。サトランストというホテルに行きたいのだけど、どっちに向かえばいいかな?」 「えっとね、あっちの道をずっと真っすぐ行って左側にあるよ」  そう言いながら子供が指さした方向へと目をやると長い直線の道が続いていた。 「ありがとう、助かったよ」 「うん、全然、大丈夫。それじゃあね」  子供たちは元居た場所へと走っていった。しっかりしているな、男はそう思った。そして、男はひとまずの目的地であるホテルへと歩みを進めた。  街はまだ活気づいている。淡いオレンジ色の光に包まれて人々が賑わっている。男は視界の端でその光景を捉えながら進んでいく。 「お兄さん、ちょっと」  男は歩みを止め、声がした方向へ振り向くと老婆が立っていた。 「あんた、旅人かい?」 「ええ、そうですけど、どうかしましたか?」 「どうってことはないよ。これ、持っていきな」  差し出された手の平には袋に包まれたパンがあった。 「貰ってもいいんですか?」 「いいんだよ、受け取ってくれ」  老婆はどこかおびえた様子で言葉を発した。 「ありがとうございます」  男はその様子を訝しみつつもそう言うと、女はすぐさまどこかへ去っていった。
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