幸せの国

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 それから男はホテルへ向かう道中だけで先ほどの女を含め、計八人から声を掛けられ食料に飲み物、傘やスプーンなど様々なものをもらった。男は物をもらって親切にされることには悪い気はしなかったが、何か引っかかるものがあった。男が旅人だからだろうか、無理に温かい対応をしているように感じたのだ。男は違和感の正体を確かめる術を持たぬまま、ホテルに到着し、フロントへ向かった。 「こんばんは、予約していたリベルです」 「お待ちしておりました、リベル様ですね。確認いたしますので少々お待ちください」  フロントの男はパソコンの画面を確かめる。 「はい、確認できました。フラクト・リベル様ですね」 「ええ、そうです」 「夕食付でご予約頂いたので、ご夕食をお部屋に準備させていただく形になりますが、何時ごろご都合つきますでしょうか」  リベルはフロントの時計を見やる。 「でしたら、八時ごろでお願いします」 「かしこまりました。今から一時間後の八時にお部屋に伺います。では、お部屋までご案内いたしますので、そちらのお荷物をお運び致します」 「すみません荷物は大丈夫です、自分で運びます」  かしこまりました、ホテルマンはそう言ってリベルを部屋の前まで案内し、リベルに鍵を渡した。 「こちらの扉はオートロックとなっておりますので、外出される際は鍵をお持ちいただくようお気をつけください」  失礼いたします、そう言ったホテルマンはフロントへと戻っていった。部屋で一人になったリベルはほんの少しだけ休もうと、椅子に深く腰掛ける。そして長く息を吐き、瞼を下す。 ――「これ」は世界を見る必要がある。  リベルはどこからかやってくる声を聞いた。
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