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「はよっ!」
後ろからクラスメイトに軽やかに声を掛けられ、私もにっこり笑って普通に「おはよう」と、挨拶を交わしていた。
そう、これがいたって普通の人付き合いであり、普通の対応だ。
なのに、あいつときたら――。
「った(痛)ぁ!!!」
私は自分のお尻を抑えて、後ろを振り返った。
一瞬、何をされたのか理解できなかった。
否、理解を脳が拒絶していたと言っていい。
「ははっ、隙あり!」
無邪気な可愛らしい笑顔には、まるで悪意はなかった。
(こ、こいつ……今、浣腸しやがったっ!?)
まったくのイミフな衝撃の根源を理解するや否や、私は回し蹴りを喰らわせていた。
こんなに感情を逆撫でされたことが未だかつてあっただろうか?
私は出たての芸人でもなければ、SMの趣味も勿論ない。
いたって普通の女子高生。
「普通の女子高生は回し蹴りなんかしないけどな……」
皮肉の言葉とは裏腹に、弟は私に労わりの目を向けていた。
「飛んだかまってちゃんだな……割と可愛い人なのに残念系かぁ」
そいつの見てくれを知る弟は、肩を竦めてTV画面に目を戻した。
そう、今どきの小学生だってしないことをしでかしたそいつは、見た目だけなら十分に可愛いに属する歴とした女子高生。
中学から続く彼氏だっているそうな。
しかも、これが真っ当な好青年だと噂に聞いた。
彼の前では多分彼女も普通なのだろう。
でないとあんな暴れ馬、私なら絶対に御免だ。
「何であんな奇怪な行動をとるんだろう?」
私には特にひどいが、彼女は他のクラスメイトの女子にも似たような行動を起こしている。
「それだけ姉ちゃんに深く関わろうとしてるんじゃない?姉ちゃんにはうざいくらいじゃないとダメじゃん?一度、腹を割ってちゃんと話してみれば?」
「そんなの求めてない」
有難迷惑どころか、迷惑千万。
顔を顰めた私に、弟はTV画面から目を離さないままに小さく笑った。
「俺は姉ちゃんに友達がいるみたいでちょっと安心したよ」
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