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バシッ!
私は背後からくる奇襲攻撃の気配を察知して、叩き返せる技術を身に付ける。
「おはっ!!!」
私に華麗に頭を叩かれたというのに、彼女のにこにこ具合には戸惑う。
「ねぇ、そういうの何でするの?」
彼女は毎日毎日凝りもせずに、嫌がらせのようなちょっかいを掛けてくる。
悪意のないその彼女のやり口の意図することが、私にはまるで分からなかった。
浣腸までされたのは流石に私が初めてであろうけれど(あって欲しいのだけれど)、彼女はクラスメイトの大半に度が過ぎたスキンシップを行っているのだ。
「流石に行き過ぎだよ」
窘めれば、彼女は小さく肩を落とした。
そして彼女から笑みが消える。
「無視されたくない」
どうやら、彼女は彼女なりに心の闇を抱えているようだった。
それは、彼女が中学生の頃のこと。
始まりは小さな陰口だったと、彼女は零した。
でも徐々にそれはエスカレートして、あからさまにクラスの女子全員に無視されるようになったという。
「それでも、馬鹿みたいに燥いで能天気に過ごすの。全部、全部、私の気のせいで、ただの被害妄想だってことにしちゃうの……」
『来たよ、あっち行こう』
あからさまに背を向ける友達に向かって、侍り付く。
『ええぇ、私も一緒に行くしぃ~!ねぇ、コラ、置いてくなっ!たははっ』
傍から見れば、他愛のない戯れの構図。
演じることでポッチでないことを必死にアピールする日々。
惨いな……。
「そうでもしないと、私なんか誰も構わないよ」
彼女は自己肯定感が低すぎるあまりに、まっとうな人付き合いが出来なくなっていた。
でもだからって、突撃するか?
普通なら壁を作るものだ。けれど、彼女は敢えてぶち壊す。
普通とは真逆の行動を取っていた。
ああ、だからか。
他人との壁の厚い私に、彼女は特に手痛い行動を起こしてくる。
他人の気持ちなどお構いなしなくせに、自己主張だけはご立派だと何故そこに気付かないのか。
やっぱりムカつく。
「でも、もう今はそんなことないでしょ?」
誰も彼女を無視していない――近頃ではウザがる人が続出で何とも言えないところだが、イジメの類ではない。
周りはそれとなしに退いているが、彼女がターゲットを私に絞り出してからは、その傾向も薄れているように思う。
(どういう訳か、私への圧は凄まじいが……)
高校生は中学生とは違う。
私たちは着々と大人の階段を上っている。
それでもそんなことにならないと、彼女は言い切れない。
私たちを信じきれない。
彼女は私と同じ、人間不信だった。
それもきっと重症。
彼女は過去に悪意の粒子を吸い込み過ぎた為に、過呼吸を起こしているように私には思えた。
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