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「美沙は絶対に裏切らないって、思うもの」
なるほど。
これが世に言う上目遣い。
私が男子だったらイチコロだったろうが、生憎と同性相手にキュン的要素は見られなかった。
「私、美沙が陰口を嫌うのも知ってるし、話がそっちにエスカレートしそうになったら、上手く視点をずらして方向性を変えてるよね?」
自分の事を棚上げして、あることないこと吹聴しているのは聞くに堪えないからだ。
「輪の中に上手く入れない私のことも庇ってくれてたでしょ?」
否、庇っていた訳では断じてなく、皆が退いていくから私が生贄の如く取り残されていただけだ。
「私、美沙の内側に入りたい。美沙とは本音で何でも話せる気がする」
本音で何でも話せる?
例えば――やっぱりこいつはムカつくとか?
それは本音が綺麗な者の台詞だ。
私の本音は聞かせられない程度にはどす黒い。
「礼儀があれば、誰とでもいい関係は築けるよ。誰とでも仲良くなれる」
私は真っ当な提案をしているのに、彼女は首を横に振る。
「言ったでしょ?私は美沙のことが好き。私は美沙がいいの」
愛の告白のように『好き』を軽く言える彼女は正に帰国子女。
違った人種に思えてくる。
私の何をそんなに気に入ったのか知らないけれど、でも、これは良い取引材料になる。
私は目を細めた。
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