一人ぼっち

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一人ぼっち

「安心したまえ少年、ひとはみな孤独なものさ」  川原でお弁当を食べていると突然、話しかけられた。見上げるとスーツの男の人が隣に腰掛けようとしていた。あぶない。ネクタイ曲がってるなあ。からあげがのどにつまりそうになった。  みんながコドクなんだって知って安心するなら、コドクが不安なことには変わりないよね。 「ハハハ、少年よ、人生に矛盾はつきものサ」  そう言いながら彼は鞄からくしゃくしゃの紙を取り出して皺をのばし、なにかを確かめるようにじっと眺めてから丁寧に折りたたんで戻した。  デザートは別のところで食べようと、プチトマトを口に放りこんで片付けをはじめた。 「理不尽を感じたらな、宇宙を見ればいいぞ少年。たいていのことはちっぽけなもんさ」  知らん、何を言っとるんだこのひとは。デザートを食べてから本を読んでみんなのところへ戻るはずだったのに。  彼は携帯電話の電源をつけたり消したりして、そのたびにため息をついていた。まあいいや、ほっとこ。  土手を駆け上がって振り返ると、あの人はまた紙を広げたり電話をいじったりしていた。食べ残しのおにぎりをひとつ、置いてきてしまった。ポケットの中の防犯アラームは汗でびちょびちょなことに気付いた。  いちおう先生に報告すると、「これからはちゃんとみんなと一緒に食べなさい」と叱られたけれども、みんなもう食べ終わって遊んでいたので、ぼくは木陰でデザートを食べながら本を読んだ。本に比べたら、宇宙だってちっぽけじゃないか。
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