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要は鍋の火が弱火になっているのを確認すると、台所を離れ、作業台に向う一花のほうに近づいた。
「大丈夫? この間みたいに、あんまり根つめちゃダメだよ」
「平気よ。要くんと黒ちゃんが手伝ってくれたおかげで、もう8割がた作業も終わってるから」
「ならいいけど」
大学はすでに夏休みに入っている。一花は現在夏の大型イベントに向けて新作づくりの真っ最中だ。本当ならまだ少し時間があるのだが、前倒しで作業を進めている。
「まぁ、いつきちゃんには夏休みにみんなでお泊り海水浴って約束させられちゃったし」
「こればっかりはしょうがないわね」
無事に隠しおおせるかと思われた颯太の企みであったが、なんといつきにまんまとバレしていたことが判明し、ひと悶着あったのはつい先日のこと。自分だけ蚊帳の外に置かれたと、当然のことながらいつきは非常におかんむりで、なだめるのに苦労したのだ。
その代償として海水浴を請求されたわけなのだが、結局ただみんなと夏を楽しみたかっただけなのかと、要も一花もほんわかしたのは言うまでもない。
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