生み出された大家族

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生み出された大家族

 これは私が中学生の時、数少ない友人の一人だった子の話なんです。仮にAでいいですかね? こういう話が好きらしいので学校くらいなら教えてもいいですよ。私、学校にいる間はいつもAと一緒にいる仲だったんですけど初めて彼女の家に行く機会があったんです。 「最近わたしが後に家に帰ってきた時だけ、お姉ちゃんが“違う”時があるの」 「違うって何がさ」 「わたしに一切話しかけてこないし、無視するし、ふたりきりだとニヤニヤしてて…… 次の日にはいつも通りなんだけど」  からかわれてるんじゃないかと疑いました。 「わたしもそうだと思うんだけど、後で聞いてもあんたどうかしたの? って反応返ってきて、お母さんに向かっては普段通りにしてるの。何よりお姉ちゃんはいままでそんなことする人間じゃなかったからまるで他人がいるみたいに不気味でさ〜〜」 「Aが何かしちゃったんでしょ」 「そうかも知れないけど、家で起きいてることなのに家族に言うのはバレたらめんどくさいし、怒らせるようなこと身に覚えがないし、もう1ヶ月半くらいこんな調子だと何も身に入らなくなってきて……」 「だから、今度“そう”だった時はさ、時間空いてたらお姉ちゃんに話つけるのに付き合ってくれない?ひとりじゃ勇気出ないからさ〜」  私がこの話に前向きにOKしちゃったのはいじめ撲滅ビデオとか見て他人の問題をガツンと解決してやる光景に憧れてたイタイ奴だったからだと思うんですけど……。それからAの家にお邪魔したのは2〜3週間後くらいでしょうか。土曜日だったのは覚えてます。 ねぇ今日はこれるよね!? お母さんもいるし、マジでちゃんと変だから!!!  何がちゃんと変なのかはわからないメッセージを貰ってAの住んでいる一軒家に行きました。 「お邪魔します!」  鼓舞するって思いで大声でAの母親に挨拶しました。 「ああ、こんにちは。いつもAから話は聞いてるのよ。リビングの棚に入ってるお菓子は誰のものでもないから好きなの持っていっちゃっていいから」  若い時はそこそこ美人方向だったんじゃない? って人でした。私が人の顔言い表すの慣れてないからどうも口で説明できないんですけど。Aの部屋はゲームのかわいいキャラのぬいぐるみとかでいっぱいで、私の知らないところで他の子とゲーセンとか行ってるのかなぁって思いました。 「いま無理矢理でもお姉ちゃん連れてくるからちょっと待ってて」  速い足取りでAは2階に消えてって、私は個包装のチョコばかり頬張りながらどう姉妹仲を取り繕ってやろうか妄想してたの。 (もしAの方が断然悪かったら驚きだな〜〜 もしかして実はお姉さんヤンキーみたいな人だったりする?殴り合いになったら……ってお母さんいるからそんなわけないか!それとも、学校でこっくりさん流行ってるし狐に憑かれてたら私どうし………………)  遅い。確かではないけど5分かもしかしたら10分くらい経ってないかってくらいで。 (呼ぶだけでそんな時間かかることある? あ、そっか今二人の間に問題があるんだった。大変なことになってたらまずいから私も見に行かなきゃ)  声を盗み聞きしようって思って忍び足して、階段の途中でちゃんと聞こえたの。 「あんたの友達来てるの? いきなりすぎ聞いてないんだけど」 「本人には嘘の話して悪いけど…… あのこ優しいからなんでも手伝ってくれるし変な話も好きだからさ。まぁ実際会ったら二人とも仲良くなるって!」 「まぁ友達欲しいって言ったの自分だしね」 「出てくるのに時間かかりすぎで心配されちゃうよ! 早くしよう! わたしも楽しみなんだし」  それで私は本当に驚きました。ふたりが仲良さそうだからじゃないですよ。  声が全部Aのものだから。  頭の整理がつかない中で自然に気づいて振り返ったら廊下に洗濯物を抱えたAの母親が居て 「あ、え、Aのお母さ……」 「ほんと困ったものよねぇ?」 「えっ」 「仲良くしてずっと一緒でいてくれるなら家にいるのはなんでもいいって、漫画の読みすぎよねぇ?」  それと同時に階段を降りてくる足音がふたつあるのに気づいた時、私は家を飛び出していました。  意外にも急用ってことで学校で会ったAは許してくれました。でも、その後会話することもなくそれからしばらくしてAとその家族はどこかに引っ越していきました。他の生徒に尋ねるとやはりAは一人っ子らしく、何故私を全てを打ち明けるのに選んだのか、友達が少なく何も知らなかったから? それくらい彼女の特別な人間にはなれてたから? もう何も解ることはありません。  ただ、Aの家だった一軒家だと思うところが今じゃ心霊スポットになってるって噂を聞いたんです。
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