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「俺を愛してよ、ゆうこ」
鮮烈な眼差しが理性を焼く。「じゃあ、私を愛してくれるの?」と、震える声を隠して尋ねる。驚いたように目を見開いた彼は、口の端に不格好な笑みを浮かべた。
「愛し方なんて知らねえよ。誰も教えてくれなかった」
冷たい掌が頬を包む。どうか、私の身体に流れる全ての熱を奪って、余裕のない拍動を刻む心臓を止めてくれないだろうか。バカなことを思った。
彼の指先が望む通りに、私は目蓋を閉じなかった。冷笑とも呼べる表情の私を、彼が息を止めてみている。
「ゆうじ」
彼の口調を真似て、柔く、優しく、その名前を口にする。指先が固まった隙をついて、素早くベッドを降りた。呆然と見上げる彼を、綺麗に笑って見下ろす。
「ちゃんと病院で診てもらいなさいね」
「火傷」と腕を指して、背を向ける。包帯を解いた彼の腕は、目を背けたくなるほどに赤く爛れていた。きっと、私の心の裡を暴いたら、彼の火傷とよく似た爛れが現れるのだろう。
引き戸に手をかける。彼の返事はなかった。
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