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二階には似たようなドアが並んでいた。どこから見ようかと考えながらナオキが廊下を歩いていると、ドアの一つに外側から打掛錠の鍵がかけられたものがあるのに気づいた。ナオキは吸い込まれるようにドアへ近づき、軽い気持ちでドアを開けた。
眩しい光が目に飛び込んで、ナオキはとっさに顔をそらした。一つだけカーテンの開いていた部屋だった。手のひらで影を作りながら部屋を観察する。壁紙の柄、何が描いてあるのか分からないほど汚れた絵画、外から見えたままの部屋だった。
目が少しずつ慣れてくる。テーブルにベット、ボロボロだけどまだ形を保っている。そして一番明るい窓の前、何か立っている。すらりと長くてコート掛けのようにも見える。何だろうか、とナオキは目をこらす。
……人だった。
女の人が窓の前に立っていた。ナオキには大人の女性に見えていたが、実際には高校生くらいの年の少女だった。少女は質のよさそうなドレスを着て、ぼんやりとナオキの方を見ている。
逆光で陰っているが、それでも美人であることは分かった。痛みなく真っ直ぐな長い髪、マネキンのように整った体系、絵に描かれた女神様かと思うほど現実離れした美しさだった。しかし、その美しい顔は人形よりも感情がなく凍てついている。氷のように冷えきった瞳に見られたナオキは、凍えたように体が動かなくなっていた。
少女が不思議そうに首をかしげた。そして一歩、ナオキへと近づく。はっ、と我に返ったナオキははじけ飛ぶように部屋を飛び出し、鍵をかけ直してそのまま逃げた。
床はギイギイと音を立てて今にも踏み抜いてしまいそうだった。しかし、今のナオキにはそんなことを気にしている余裕なんてなかった。
いた! 本当に幽霊がいた! 本当に出るなんて思わなかった。ナオキは今にも泣きだしてしまいそうだった。
一階に下り、穴だらけの床につまづきそうになりながら勝手口のドアへ急ぐ。すがるようにドアノブに手をかけ、勢いよくドアを開ける。そこでナオキの足が止まった。
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