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挿入のタイミングで唇を塞がれていた為、漏れ出た嬌声は全てのぶの口内へと奪い取られる。
のぶの熱も匂いもこんな余裕の無い表情も、全部俺だけのものだと思うと嬉しさと幸せな気持ちにまた満たされる。
「ぁっ……んッ…」
そのままゆっくり俺の様子を気にかけながらのぶは動き出す。
久しぶりということもあり、繋がった下半身から溶けていきそうな恍惚感に思考がかすみがかっていく。
「…せいちゃん。その表情すっごい、エロい…。俺以外にそんな顔見せたら駄目だよ。」
のぶに言われ、惚けた頭で自分が今どんな顔をしているのかと少し気にはなったが見るのは恐いな…等と考えていると、いつの間にか口端から溢れ出ていた俺の唾液をのぶは唇を撫でるように親指で拭った。
のぶと俺の唾液で濡れそぼる唇を指で撫でられると背筋がゾクリとして、思わず甘ったるい吐息が漏れてしまう。
「……せいちゃん。俺これでもだいぶ抑えてるんだけど、そんな声…出されたら…っ」
のぶは辛そうに表情を歪ませたかと思えば、すぐ俺に抱きつくように身体を密着させる。
そして、先程よりも強く腰を打ち付けてきた。
「ぁあッ!ま…ンンっ、ンアッ─」
急に激しくなった律動に、堪らず嬌声を漏らし背中を反らしながら感じ入ってしまう。
「…っ、す…ごい締まる…ッ、もっと力抜いて…」
「むっ…り!んッぁあっ、もっと、ゆっ…くりッ…!」
振り絞って声に出した俺の願いなんて全く聞こえていないように、のぶは打ち付ける腰の強さを変えずに俺の首元に顔を埋める。
首筋や耳元にかかるのぶの荒い呼吸が擽ったくて気持ち良くて肩をすくめる。
それに気づいたのぶは俺の耳を食むようにしながら時折舌で耳淵を撫ぜた。
「んッ…、のぶ…。好き……」
小さく呟いた言葉にのぶは少し顔をあげて俺の顔を見つめる。
「俺も。せいじが好き。」
そう言われてぎゅっと抱きしめられる。
俺ものぶの背中に腕を回し抱き返した。
「一緒にいてくれてありがとう。のぶ。愛してる。」
のぶは何も言葉を返さない代わりに少し赤く染めた頬で嬉しそうな笑顔を向けて俺の左手を取り手の甲にキスを落とした。
そしてそのまま指を絡めるように手を繋がれシーツの上に縫い付けると、また唇を塞がれる。
深くて、優しくて、溶けそうな程熱い今日何度目か分からない俺の好きなのぶからのキス─
◇◇
今まで相当我慢してたのが分かるくらい、のぶに何度も求められ一晩のうちに何回も身体を重ねた。
2人で意識を飛ばすように眠りに付いたが、ふと俺は夜中に目が覚めて時計を見ると丁度2時を回ったくらいだった。
今更だけど何回目かの時にのぶは部屋の電気を消してくれた。
だから目覚めた今部屋の中は暗く、代わりに露天風呂から見えていた綺麗な月が部屋を月光で照らしていた。
俺は布団から上体を起こしその綺麗な月明かりを見つめてから、隣で眠るのぶの顔を眺める。
やっぱり眠るのぶの顔は穏やかで、起きている時より柔らかな雰囲気だなとまじまじ見つめてからこっそりキスをした。
トイレに行こうと、重い腰を気遣いながらゆっくり起き上がろうとすると、いきなり腕を掴まれ驚いて飛び上がりそうになる。
「どこ行くの?」
そう声をかけられて、のぶが起きてたのかと少しほっとして腕を掴むのぶに視線を向けた。
そして俺は月光で照らされたのぶの表情を見て、動きを止めた。
まだ意識が覚醒していないような眠そうな目をしているのぶ。
でもその瞳には不安と悲しさを映し今にも泣き出しそうな、そんな表情を俺に向けていた。
「…のぶ」
俺は横になっていたのぶを思わずぎゅっと抱きしめた。
「……トイレ行くだけだから。……もう、居なくならないよ。」
「…やくそく…ね…」
のぶから寝言のような小さな返答がありそのまま抱きしめたまま暫くすると、また寝息が聞こえてくる。
のぶは、ずっと俺を探してくれていた。
再会するまでの5年間も。
その5年間がどんな5年間だったのか、俺は知らない。
でも分かる。
その間のぶが相当苦しんだこと。
何となく、頭ではわかっているつもりだったけど、さっきの表情を見て俺は自覚させられた。
のぶにあんな表情をもうさせたくない。
俺はゆっくりのぶの身体から腕を離し起こさないように布団をのぶの上にかけ直す。
「…俺、頑張ってのぶより長生きするから…」
眠るのぶに向けて小さく呟く。
定期的に通い続けている病院でも、転移も再発も無く5年経ちほぼ完治と言ってもいいくらい元気だった。
あんなに辛い経験ばかり降りかかった時は、本当に運が悪いの一言では片付けられないくらい辛くて自分の人生に絶望した。
でも今こうして、隣に愛する人がいて健康でいられるこの瞬間は何にも変え難いくらい幸せだった。
「だから、これからもずっと一緒にいてね。のぶ」
俺はのぶの頭を起さないように優しく撫でる。
寝ているのぶの表情は、心なしか笑顔をのように見えた。
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