「夢見心地」

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事情を知った夫が息子達と一緒に車で迎えに来てくれた。 道中、運転席にいる旦那は何度話しかけても無愛想で見向きもしない。 私があんな状況に陥ったっていうのに、心配の一つもしてくれないのね。 でも、それすらもどうでも良かった。 いつもそっけない態度ばかりを取る息子達が安心させようとしているのか、大事そうに私の両手を握っていた。 嬉しかった。久しぶりに誰かに愛されているような気がして。 さっきまでの時間が嘘のよう。 愛する息子達に挟まれて、車が信号で止まる度にゆらゆらゆらゆら。 まるで揺り籠(ゆりかご)の中にいるみたい。 とっても気持ちが良い。今は何もかも幸せに思える。 だってほら、バックミラーをご覧なさいよ。 私が幸せそうに笑ってる。 幸せな時間を乗せた車は10分程で家に着いた。 夫が何やらよそよそしく車窓越しに誰かと喋っている。ご近所さんかしら。 私もご挨拶しなきゃと思い、車を出ようとするが息子達は私の手を離さなかった。 私が不思議そうに息子の顔を見つめていると、夫とご近所さんの会話が終わるのを見計らって、左隣に座っていた息子が先に降り、ご近所さんに一言挨拶をした。 「被疑者を取調べ室へ。」
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