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彼女は、とある少数民族の血をひいている。
そしてこの民族への弾圧が、今世界的に問題視されているのだ。
「ではまず、どのようにしてあなたがあの国の当局に掴まったのか、お話いただけますか?」
進行役が女に優しくうながす。
呼吸を整える数秒間をおいてから、女はゆっくりと話し始めた。
「あの国には数年前から、商売のために行き来はしていました」
「ある日、そこに住む友人から電話がありました。私のための良い仕入れ先が見つかったから、来てほしいと」
聴衆は静かに女を見守る。
ここは「民族問題を考える」と題された講演会場だ。
「そしてそれは、目的地の駅に着いた瞬間でした。警察がやってきて、いきなり捕らえられたのは」
「その友人は、警察とグルだったのでしょうか?」
いきなりの展開に驚きを隠しながら、進行役がたずねる。
「ええ、今思うときっとそうだったのだと思います……」
「そのまま収容所に?」
女は頭を縦にふる。
「荷物も、財布も、パスポートもすべて没収されました。そしてこの紙にサインするよう言われました」
女はおもむろに、一枚の紙を取り出す。
「この紙には、『私はテロリストです』と書かれていることが今は分かります。しかし私は、その国の言葉を話せませんし、読めません。」
「翻訳を頼みましたし、弁護士も頼みました。しかしすべて、拒否されました」
聴衆を包む暗闇から、驚きと怒りにも似た空気が小さくゆれうごく。
「警察の威圧的な態度に負け、結局サインするしかありませんでした。」
「するとそのまま、私は収容所の部屋に入れられたのです」
進行役は、女を思いやるように眉をよせながら、話をうながしてゆく。
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