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生まれつき、というか父親が目付きが鋭かった。母親もむしろ性格がキツそうな顔をしていたし(実際これが怒るとまじで怖い)遺伝か悲しいことに年頃の妹も目付きはそこらの女の子に比べて悪い。
それでも両親の血を色濃く受け継いだのは俺らしく、物心ついた時からこの目付きの悪さのおかげで「多々良君怒ってるの?」とか言われるわ、目が合っただけで「うわ、なんか睨まれたし、怖~~」とか言われる始末だ。
人付き合いは元々苦手なのでそれが余計拍車掛けているのかもしれないが、中学くらいから身に覚えのない不良のレッテルが貼られていた。
しかし、成長期とともに身長が伸び、お陰でそのよくわからん不良レッテルは独り歩きし、気が付けば柄の悪い連中に絡まれ、喧嘩を売られ、それを適当にあしらおうとすれば必要以上にビビられその噂はでかくなるという……要するに悪循環だ。
周りから避けられ、こちらから勇気を出して話しかけてみてもその人間にまで不良たちに目をつけられることを考えたら必要以上の会話をすることも出来ないまま高校に上がり、そこで出会ったのが仲吉爽だった。
仲吉が俺に話しかけてくれたことが切っ掛けで、俺の学生生活は大分変わった。
街中で大きな荷物を抱えたおばあさんに「手伝おうか」と声を掛ければ逃げられたりもしたが、それでも、仲吉と仲がよかった連中は俺を普通に扱ってくれた。
俺は、なんだかんだ仲吉に助けられている。
消極的な俺を連れ出してくれるのはいつだって仲吉だった。感謝してもし切れない。たまにその横暴さにまじでブチ切れそうになることもあるが。
……まあ、こんなこと、本人には死んでも言えないのだけれど。
翌朝。
「おい、仲吉、起きろ、朝だぞ!」
「んぅ……? んん……あと五分……」
「何があと五分だ! 旅行行くぞって言ったのお前だろ! たらたらしてたら夜になるぞ!」
寝惚けてしがみついてくる仲吉の頭を軽く叩けば、『旅館』という単語にハッとした仲吉は飛び起きる。
「旅行じゃなくて聖地巡礼だって言ってるだろ!」
そこかよ。
ともかく、俺達は早速身支度を済ませることになる。
仲吉のやつに至っては行く前提で旅行グッズまでご丁寧に準備してやがった。
一泊二日といえ、旅行は旅行だ。
それに、心霊スポット……あの洋館に入るためには山の中を歩く必要もある。登山となると中々荷物も嵩張ってくるわけで。
虫よけスプレーに懐中電灯。万が一電池が切れた時の予備に、途中で仲吉が腹が減ったと喚き出したときに大人しくさせるためのお菓子。
あとはカメラは仲吉が持ってきているだろうから突然雨が降ってきたときのための折り畳み傘と……絶対仲吉は持ってきていないだろうからもう一本持っていって、土砂降りになる可能性を踏まえてレインコートを……。
「って準一、そんなにいらねえだろ! つか、バッグいっぱいで破れそうだし」
「んなことねーだろ。大体、お前が軽装過ぎるんだよ。夏の天気は変わりやすいって言うし、今日も降水五十パーだし」
「本当お前は心配性だよな」
「お前が何も考えてなさすぎるんだよ」
「なんだよそれ、絶対お前が細かいんだって! ほら、そんときはそんときでまたどっかで買えばいいだろ? 早く行こうぜ」
「あっ! おい、勝手に持っていくなって!」
というわけで、俺達はマンションを出て、下に停めてある仲吉の車の元へ向かった。
本当、驚く程仲吉とはあらゆるところで気が合わない。
俺が和食がいいといえばあいつは中華が食べたいとかいうし、俺がこっちがいいと言えばあいつはあっちのがいいとか言うし。わざとか?と疑いたくなるレベルで気が合わないのだが、高校を卒業してもこうして一緒にいるのだから人間というのはよく分からない。まあ、気が合わないからこそ、こうしていられるのかもしれないが。
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