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② @旭川 彩
必死で探していると、休憩室から話し声が聞こえて来た。
そっと近づき中を伺うと四、五人の新入社員がいて、その中の一人が手に持っているのは私が落としたラブレターだった。
そこにいる面子を見てさーっと血の気が引いた。
彼がいたからだ。
ラブレターを持つ男は私の書いたラブレターをひらひらと掲げながら言った。
「おい、これ四十二歳のアヤっておばさんが誰かに宛てたラブレターみたいだぞ。相手誰だろな?」
年齢と下の名前だけ書かれたラブレター。確かに私が書いたラブレターだ。
私の名前は彩、アヤと読んでしまったようだ。
なるほど四十二歳のおばさんだ。
「若い男じゃねーの?」
「うへー俺じゃねーよな? もしか美人だったとしてもいくらなんでも年上過ぎるって」
口々にアヤの事を悪く言う男たち。
だけど彼は、
「人が人を好きになるのに歳なんか関係ないだろ? 俺アヤさん素敵だと思う。こんなに愛されるヤツが羨ましい――」
え……? 本当に?
私の心は喜びに震えた。
彼は私の事をもしかしたら受け入れてくれたりするのか?
「じゃあお前アヤって人が好きなのがお前だったらOKするのか?」
「それは……無理だ」
「ほら、口ではきれいごといってみてもそういう事だろう?」
「…………」
あぁ……本当にタチが悪い……。
期待を持たせて結局はそれか……。
だったら最初から――。
男たちが去った後、その場に残されたラブレターを拾い、跡形もないくらいびりびりに破り捨てた。
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